間もなくして、一颯くんが珈琲を手にして戻って来た。
お盆からソーサーを手に取り、お父さんの前に置く。
そして、お兄さんの前にも。
一颯くんが私の分をテーブルの上に置くと、ガチャッと玄関の開閉音がした。
「母さんが帰って来たみたいだな」
お父さんの一言で再び緊張が走る。
どうしよう、大丈夫かしら?
3つも年上だから、嫌われないようにしないと……。
母親からすれば、可愛い息子を取られていい気はしないってよく聞くもの。
私はソファから立ち上がり、リビングドアの方へ身体を向けると。
「ただいま~!」
少し高めの澄んだ声と共にスラリとした女性が姿を現した。
ストレートの黒髪に色白の肌、口元にあるホクロが印象的な女性。
見るからに知的な雰囲気が漂っている。
あの人が一颯くんを産んでくれたお母さん。
「はっ、初めまして!……国末寿々と申しますっ」
私は、深々とお辞儀をした。
最悪、またしても噛んでしまった。
恥かしさのあまり、下げた頭が上げられない。
ギュッと両手を握りしめてると……。



