「寿々さん、おいで」
一颯くんが気を遣ってくれて、手を引いてソファに誘導してくれた。
「ここに座ってて?」
「………ん。………失礼します」
礼儀を弁え、会釈して腰を下ろした。
ダークブラウンの本革ソファ、ガラスのローテーブル。
そして、何インチかも分からないほど大きなテレビ。
どれを取っても高級感があり、洗練されている。
コの字型のソファの端に座った私。
テーブルを挟んで相向かいにお兄さん。
そして、左隣り側にはお父さんが腰を下ろした。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
「…………はい」
お兄さんが優しく声を掛けてくれるが、緊張しない方法とやら教えて貰いたい。
引き攣る顏を何とか堪え、自分の手元に視線を落としていると。
「寿々さん」
「は、はいっ!」
思わず声が上ずってしまった。
そんな私を見ても笑う事無く、お父さんは優しい笑みを浮かべたまま。
「あんなにも沢山の料理を……ありがとうね」
「え?………あっ、いえ、とんでもないです。お口に合いましたでしょうか?」
「えぇ、勿論。とっても美味しく戴きましたよ」
「……そうですか」
お父さんの言葉にホッと胸を撫で下ろした。



