来る途中に、一颯くんに散々聞かされていた。
『俺の実家はゴミ屋敷だから』
あまりにも真顔で話すものだから、本当の所、半信半疑だった。
だけど、彼が言った意味が何となく分かった気がした。
玄関の上がり口に私の膝位までの高さに積み上げられたご贈答品の数々。
あまりに無造作に置かれていて、あまり気にしないご家庭なのだと理解出来た。
別に綿埃がもっさりあるとか、蜘蛛の巣が張ってるとか、足の踏み場がないくらい散らかっているとかでは無い。
ただ単に要らない物には興味が無く、片付けるのが面倒なのだと感じた。
一颯くんから『法曹一家』だと伺った時は本当に驚いたけど、仕事が忙しくて家の事まで手が回らないんだと思う。
私の実家は母親が専業主婦だから、その点は大きな違いがあるようだ。
「お邪魔します」
消え入りそうな声で呟き、震える足で廊下を進む。
一颯くんの後を追い、リビングと思われる部屋に入ると。
「いらっしゃい」
「はっ、初めましてッ!国末寿々と申しますっ」
私達の到着に合わせたように、お父さんが出迎えてくれた。
もう~ヤダッ!!
お父さんを前にしても緊張でカミカミだよ。
ホント、最悪。
深々お辞儀をして、頭を上げると。



