「除夜の鐘なんて、ついた事ないよ?一颯くんはあるの?」
「うん、ある。ちょっと田舎だけど、夜景が綺麗に見えるお寺があるんだ」
「へぇ~、穴場なんだね~」
「うん。……だからさ、今から支度して行こうか」
「へっ?………今からって、今、まだ16時だよ?」
「うん、そうだね。今から電車に乗って、電車を降りたら駅前のスーパーに寄って……」
「スーパー?………除夜の鐘を鳴らすのに、何か要るの?」
「う~ん、鐘つきには要らないんだけど、俺らの……夕食?」
「あぁ~なるほど~!」
俺の言葉を真に受けて、彼女は何の疑いも無く頷いている。
そんな彼女にサラリと本題を切り出した。
「そのついでにと言っては何なんだけど、俺の実家に泊まるってのはどう?」
「……………え?…………今、何て?」
「だから、俺の実家に行かない?」
「ッ?!…………そ、それは……ちょっと………」
寿々さんは俺の予想通りの反応を示した。
だから、彼女の不安を取り除くように………。
「昨日帰省した際に、寿々さんとの事は話してある。勿論、あの人との事も。それから、今……この家に住んでる事も」
「えっ?!………そ、それで?」
「寿々さんが作ってくれたお重の料理を食べて、寿々さんの事を気に入ったみたい。優しい味がするって」
「ッ?!………それ、ホント?」



