「もう、どこにも行かないよね?」
「ッ?!」
………ダメだ。
羊の仮面なんて何の意味も持たない、所詮、仮面だ。
まだお酒が抜け切らず大胆な事を言ってるのかもしれないけど、今の俺にはそれさえも判断出来そうにない。
必死で繋ぎ止めてる理性の手綱を………彼女はいとも簡単に絶ち切ってしまうのだから。
背中に回された腕がほんの少し解けかかる。
そんな些細な事でも、今の俺には引き金にしかならない。
彼女の身体が離れて行かないように腰と首を支えるように腕を回した。
すると、
「くっ、………苦し……いょっ……」
くぐもった彼女の声に反応するように咄嗟に腕を緩めると、真っ赤な顔をした寿々さんと視線が絡まる。
色香を漂わせた彼女の表情は、今の俺には毒にしかならない。
思わず視線を逸らすと、
「一颯くん?」
甘美な声音が耳に届く。
この距離でその声、心臓に悪いよ………寿々さん。
俺の胸に手を添え、潤んだ瞳で見上げて来た。
「ねぇ、ずっと、ここにいてくれるの?」
「ッ!!」
「もう……1人にしないでね?」
彼女は俺の心臓を止めたいらしい。
好きな人にここまで言わせて………ホント、自分が情けない。
俺は彼女を安心させるように、彼女の耳元にそっと囁く。



