そんな風にして手にした謝礼の品。
勿論、彼女への贈り物に。
俺が持っていても宝の持ち腐れだから。
それに、彼女がオーガニックカフェを開きたいと勉強中な事を話したら、物凄く喜んでくれた農園の主。
次に来る時は、彼女と夫婦になって来るように言われたんだ。
まぁ、それは彼女にはまだ内緒だけど。
寿々さんがうっとりと眺めるその先には、俺が苦労して手に入れた契約書が握られている。
偏屈で有名な主だったけど、俺には生真面目な男にしか見えなかった。
半端な事が大嫌いなだけだと……。
だからこうして、俺達に少しばかり気の早い『贐』が贈られたってわけ。
彼女はその意味をまだ知らないけどね。
俺は自室から荷物を手にして、彼女の隣りに腰掛けた。
「寿々さん」
「……ん?」
「行って来るね」
「……………うん」
視線を手元に落としていた彼女がゆっくりと顔を持ち上げ、俺の方に視線を向けた。
そして、ほんの少し寂しそうな表情と声音が俺の心にそっと響く。
「行ってらっしゃい」
「ホントに行っていいの?」
「え?」
「だから、俺が行って、淋しくない?」
「………大丈夫だよ。この子がいるし」
彼女は俺の目の前に契約書を掲げた。



