Special Edition



広大な敷地のどこかから軽やかな歌声が耳に届く。

研究員の仲間に尋ねると、収穫時期に歌われる曲らしい。


労働者たちが小さな実に込めた愛情が、その心地良い音色で最高の一粒に変化するのだと感じた。



そんな風にして辿り着いた農園で、俺は様々な仕事を手伝いながら土壌品質の管理や木々の育成に携わった。


通常は検査し、ある程度の手伝いや助言を行えば終了するのだが、俺は時間がある限りその農園に足繁く通った。

少しでも現地の状態や豆の知識を得たくて……。


寝る間も惜しんで2ヶ月近く通い込んだ結果、俺は大農園の主の心を射止めた。



そして――――――。




「本当に一颯くん、ありがとうね!」

「何度言えば気が済むの?もう、20回以上聞いた気がする」

「そんなの、何度だって言うよ~。100回だろうが、1000回だろうが」

「フフッ、あっそ」

「だって、有機栽培の珈琲ってだけでも貴重なのに、その木を年間50本だなんて……夢のまた夢だよ!!」



彼女が熱弁する『年間50本』と言うのは、俺が農園の主から戴いた謝礼なのだ。


愛する彼女の為に少しでも知識を活かしたいと邪な考えにもかかわらず、お国柄なのか、農園の主は感銘を受けたとしきりに話していた。