結局、折れるのは俺の方だ。
彼女をこれ以上傷つけたくないから。
「寿々さん」
「………ん?」
俯いたまま、声だけが返って来る。
そんな彼女の気分を少しでも癒してあげたくて……。
俺は浮気相手のコイツを彼女に返さざるを得ないんだ。
「はい、宝物を返してあげるよ」
「ッ?!」
俺の言葉に一瞬でパッと明るい表情を浮かべる彼女。
今の彼女には、俺よりコイツの方がいいらしい。
心の奥にチクッと痛みを感じながら、俺は彼女の手のひらにコイツを乗せた。
「ありがとッ!!」
「どう致しまして」
再び恍惚な表情を浮かべ、大事そうに手にする彼女に。
「そんなに大事?」
「うん!!すっごく大事!!一颯くんのお陰だよ!!これを手にしてれば、絶対カフェは成功すると思うんだよね~」
「そういうもの?」
「うん!!私のお守りだもん!!普通、こんな凄いもの、手に出来ないよ?!」
彼女は瞳を輝かせ、俺に力説する。
あれだけ必死になった甲斐があったってもんだよな。



