桐島蘭清の作品を取材に来ていた人達が

一気に入り口付近に集結していた。


数台のカメラを向けられ、

煌びやかな会場内に更に煌びやかなフラッシュが一斉に降り注ぐ。


その渦中の人物に視線を向けると……。


「あっ」

「ご存知なのですか?」

「………ん。確か、御影グループの御曹司だったと思う」

「御影グループって、あの御影?!」

「………ん」


御影グループとは、世界的にも有名な財閥だ。

他業種を扱い、日本国内に於いては右に出る者はいない程の財力。


その御曹司が恋人と思われる人物を隣りに連れて現れれば

そりゃあ、カメラが集結するのも無理はない。


ゆのも『御影』という名は知っているみたいだ。


都内にも百貨店を始め、

あちこちで『御影』の看板を目にする。



「凄~い!!世界的に有名な人と同じ会場にいるだなんて……」


ゆのは胸元で両手をギュッと握り、

視線はカメラの先の2人にロックオンし、

俺がイラつくほどに瞳をキラキラと輝かせている。



俺は扇子をギュッと握り、

ゆのの横顔をじっと見つめていた。