「はい、次は本田な?」
「えっ、私も?」
「当たり前だろ。いつもは会長夫妻が抱くのを傍で見てるだけなんだから」
「………いいのかしら?」
本田は遠慮がちに杏花に尋ねている。
「勿論!!寝ている時が抱き時ですよ?最近、暴れるようになって来たから」
「フフッ、そうなの?………じゃあ、ちょっとだけ」
聡の手から本田へ斗賀が手渡された。
恐る恐る抱く姿は微笑ましい。
「天使みたい」
「でしょ?起きると、小悪魔に大変身なのよ?」
「えぇ~」
斗賀を抱く本田は、普段見せぬ柔らかい笑みを浮かべていた。
きっとそれは『赤ちゃん』である、斗賀の魅力だろう。
「本田」
「はい?」
「可愛いだろ」
「はい、とっても可愛いです」
「赤ちゃん欲しいよな?」
「そうですね、…………いつかは」
「…………だってさ」
「何で俺に言うんだよ」
「お前に言わなくて誰に言うんだよ」
俺は誘導尋問のように本田を通して、沢田を急かす。
こうでもしなきゃ、きっとこの2人はいつになってもそうならない。
仕事一筋の2人だから。



