勿論、当人同士の気持ちが1番だが、
今日は本田に『赤ちゃん』を堪能して貰いたくて……。
一条本宅へ斗賀を連れて行くと、
必ず、祖父母に斗賀を取られて本田は殆ど抱いてない。
何かの行事の時は勿論の事、
杏花や俺が斗賀の面倒を看れないと解ると、
村岡がサッと斗賀の面倒を看てくれる。
それは本当に有難いのだが………。
だから、今日はほんの少しでも幸せをお裾分けしたいと思った。
いつも、影から見守り、支えてくれる聡と本田に。
俺は村岡の手から斗賀を受取り、聡の元へ。
「ほら、抱いてみろって」
「えっ?」
「今、熟睡してるから、抱き時だ」
「…………じゃあ……」
聡は恐る恐る斗賀を手にした。
「どうだ?………可愛いだろ」
「………ん、癒されるな」
ポロっと呟いたその言葉。
それが大事なんだと俺は思う。
毎日仕事から疲れて帰ると、
大好きな女性(ひと)と可愛い子供が待っててくれれば、
困難な案件も頑張れるだろ?
俺は隣りに座る本田に視線を向けると、
聡同様、目尻を下げて柔和な表情を浮かべていた。



