「はい、お義母さん」
本田は村岡へ取り皿を手渡す。
そして、ローストチキンとサラダが盛られた皿を受取ると
「はい、杏花さん」
「へ?」
「せっかくのお料理が冷めちゃいますよ?」
「あっ、はい。………え?あっ!!私がしますッ!!」
本田の声掛けに素に戻った杏花。
というより、自分が作った料理で素に戻ったと言うべきか。
昨夜から仕込んだ料理の数々。
さすがに状況に流されるままの杏花ではない。
杏花は慌ててキッチンへと。
恐らく、先程の続きをしに行ったのだろう。
そんな杏花を追うように本田もキッチンへと向かった。
「要様、坊ちゃまは私が見ておりますから」
「うん、ありがとう」
村岡に斗賀を預け、俺は久しぶりに聡と飲み始めた。
暫くして戻って来た杏花と本田。
その表情は見るからに明るい。
ムール貝のトマトソース蒸しを頬張っていると、
「んッ?!」
隣りに腰を下ろした杏花に脇腹を小突かれた。
徐に視線を彼女に移すと、ちょっとばかり膨れっ面。
きっと、自分だけ隠されてた事が原因らしい。
だから、俺は……―――………



