「杏花、グラス持って」
「あっ………うん」
視線は目の前の2人に奪われている杏花は、
俺の言葉にも空返事で返す始末。
竹輪の次はこの2人かよ。
溜息まじりにノンアルコールのワインを注ぎ、
それを放心状態の杏花に手渡した。
そんな俺らの目の前では………。
「はい、聡」
「ん、サンキュ」
長年連れ添った夫婦みたいに阿吽の呼吸の2人が……。
「要?………どうした?」
「………ん」
心配をする沢田にアイコンタクトを取る。
「フッ、無理もないだろ」
「そりゃあそうだけど……」
苦笑する沢田と本田に釘付けの杏花。
瞬きも忘れ、見入っている。
俺は仕方なく、杏花を無視して……。
グラスを少し持ち上げ、乾杯の音頭を取った。
「「「 乾ぱーい 」」」
杏花は無言でグラスを傾け、小さく頷く。
まるで人形のように。
そんな俺と杏花の事を気遣い、
「さなちゃん、そこの取り皿取ってくれるかしら?」
村岡が収拾を図ろうと動き出した。



