届け!





『あ、そっか。
しゃべれねぇんだよな。
ほら。』




そう言って俺が、
その子の制服のポケットから勝手に携帯を取り出して渡すと、
不審なものを見るような目で見られた。




失礼だな。






"不便だけど、
字はちょっと上手くなったよ!"




"あたしは、声がなくなることよりも
もっと嫌な事を経験したから。
しゃべれないくらい、どうってことないんだよ。"




"大げさに言ってしまえば、
声なんてなくても別に生きてけるよ。
心臓あるんだから!"




さっき、そう言っておどけて笑っていたこの子を見て、
何でか笑いたくなった。




なんか楽しくて、ツボにはまった。
そんな俺を、
なにコイツ、みたいな顔して見てくるのがまた面白くて
笑いが止まらなかった。




前向きに生きる彼女を見て、
もしかしたらあの2人をどうにかできるかも、って
ふと思って、
そしたら勝手に口が動いてた。




仲間になれと。