気づけばもう夕方。




時計の短針は6を差して、




空はオレンジ色。




賀川君、と言うたびに
「堅苦しい!伊月でいいっす!」とうるさいので、
最終的にそう呼ぶことになり、




「じゃぁ俺も下の名前で呼んでくれよ。
1人だけ苗字じゃなんか寂しいし。」




と、安西君に言われ、
しかし何となく安西君を呼び捨てするには気が引けたので
龍也君と、
龍也君はあたしを、
爽花ちゃんと
呼ぶことになった。




そして、




「なぁタツ、もうこれ外していい?
かゆいんだけど。」




そう言いながら、伊月が
自分の髪を浮かせる。




その中からサラリ、赤い髪がこぼれて
肩の位置まで下りた。




「って言いながらもうすでに外してるし!」




「大丈夫だって!
爽花さんはこんなこと他言したりしねぇよ!」




ポーイ、と
真っ黒なもさもさのカツラを軽快に投げ捨てて言う伊月。




呆れたように
「まぁ、それもそうだな…」と、溜息を吐いた龍也君も
自分の髪を外した。




龍也君もカツラだったんだ。




その中から現れた
ベリーショートの黒髪を見つめて思う。