―――――ザーザーザーザー
雨が降るなか、電信柱のそばに置かれた小さなダンボール箱。
その中で、小さな白い子犬が震えていました。
とても寂しそうな、悲しそうな顔で
寒さを少しでも凌ごうと、猫のように丸まっていました。
そんなとき、そこへ通りかかったのは
ボロボロな黒いランドセルを背負った
小学生の少年。
傘は差さず、ダウンのフードをかぶって、
手はポケットの中。
雨に濡れながら、ビシャビシャと水音混じりの足音を鳴らして歩いていた。
そして、少年は
電信柱に隠れて見えなかったダンボール箱を
すれ違いざまに見つけた。
2、3歩過ぎたところで
ピタリと立ち止まった少年。
それから、ゆっくりと
今度は後退し始めた。
1歩、2歩、と
ダンボール箱のすぐ横の位置まで戻って、
おそるおそる、その中を覗き見た。
雨に濡れ、跳ねた泥がたくさんついた白い毛。
小刻みに震える小さな体。
寂しそうな、悲しそうな
まんまるの瞳。
それを見た瞬間、少年は
目にたくさんの涙を溜め始めた。
グッと唇を噛んで、
拳を握り締めた。
