「あ、定春!」




安西君の焦ったような声も聞かず、
定春はあたしの顔をペロペロ、舐め回す。




くすぐったいし、ベタベタするし、うっとうしいけど、




か、可愛いっ!!!




可愛いコイツなに!?可愛い!




毛ふわっふわだ!




舐め回す代わりに、あたしは撫で回した。




安西君が苦笑いしてる。




「あ、定春ー!
やっぱりお前ここにいたんだな!
どうだ?その方、舐め心地いいだろう!」




…舐め心地って何だよ舐め心地って。




ジュースとお菓子の乗ったトレーを持って現れた賀川君が、
じゃれ合うあたしたちを嬉しそうに見ている。








それから数分、あまりにもじゃれ合う時間が長いので、安西君が止めに入ったことによって、定春とあたしはやっと落ち着いた。




はぁ、可愛かった…
もっと撫で回したいぜ。
連れて帰りたいぜ。
一緒に寝たいぜ。




そんな欲望に満ちたあたしの視線に気づいたらしい賀川君が、困ったような、焦ったような表情で定春を抱きしめた。




「い、いくら何でも!いくら爽花さんでも!
定春は渡しませんよ!コイツは俺の大事な家族っすから!」




い、良い奴だなオイ。
実は赤い髪の不良のくせに犬を家族だって、めっちゃ良い奴じゃないかよコイツ。