「お、出たな定春!」




どうやら賀川君は家に電話していたらしい。
っていうか
出たな定春、って
まさかあの犬が電話に出たんじゃ…いやまさか。
犬でしょ?犬だよね?




「定春!今親父とお袋、家にいるか?」




そう聞く賀川君に、
「ワン、」と応答する鳴き声が小さく聞こえてくる。




そのまさかだったらしい。




本当に犬が電話してるよ、すげぇよこれ。
しかもまた会話しちゃってるよ。
すごすぎでしょこれ。





「そうか、いねぇのか。
ならちょうどいいな!
おい定春!今から帰るからよ!
タツと、前にお前を助けてくれた方も連れてくから
手洗って待っとけ!」




「ワン!」




また、賀川君の携帯の向こうから応答する鳴き声が小さく聞こえてくる。




っていうか今から!?
今から行くの!?授業は!?




と、紙に書いて賀川君に見せると、
安西君が「つっこむところ、そこなんだ」と苦笑した。




揃って首をかしげるあたしたちを、
「それを言うなら、首を洗って、だろ?
手を洗っても綺麗になるだけだ。」
と言ってまた苦笑した。