でも、行っていいのか?
知り合ったばかりの人の家にいきなり行って大丈夫?




「なぁいいだろ?タツ!
せめて俺ん家!」




「…うーん…まぁ…
でも泉ちゃんが困った顔してるよ。」




あたしは、紙に
"本当に行って大丈夫?"と書いて賀川君に見せた。




すると賀川君は、
「大丈夫っすよー!何がかわかんねぇけど大丈夫っす!」と、
頼もしげに胸をドンと叩いて言った。




それからすぐに携帯を取り出して、
どこかへ電話をかけ始めた。








プルルルル…




物静かな賀川家に、電話の音が鳴り響く。




ソファーで項垂れるようにまどろみ、寝ていた
白い犬、定春(さだはる)は




「ワンワン!」




途端に起き上がり、
嬉々と吠えながら、電話の置いてある棚へ駆け寄り、
大きな体でジャンプして棚の上へ飛び乗った。




前足で受話器を転がすと、
ころり、受話器が定春の目の前に転がる。




すると、そこから




「お、出たな定春!」




定春の大好きな飼い主の声が届いた。




「ワンワンワン!」