…というのを思い出して、
パッと3号を見やる。
「あ、思い出しました?」
あんときの赤髪!
と、机に大きく書く。
「何でわざわざ机に書いてんすか。
まぁ、そうっすけど。」
「あ、伊月。
この子な、しゃべれねぇんだ。
理由があって声が出せないって。」
「あ?そうなの?
でも関係ねぇっす!
声がなくとも俺の!愛しの定春の!恩人には変わりねぇっすから!」
そう言って、キラッキラの輝く瞳をあたしに向けてくるので
居心地悪いったらない。
「あんときはマジ、ありがとうございましたー!!」
そのうえ土下座までしてくるのだから。
慌てて3号、もとい赤髪の体を起こさせる。
…っていうか、
この人は何で今黒髪なんだ?
染めたのか。それとも、
髪を凝視するあたしに気づいた安西君が、
少し焦ったように「あっ、」と声を漏らす。
「えっと、泉ちゃん、
あの、伊月が本当は赤髪なこと
誰にも言わないでほしいんだ…。」
"本当は赤髪"、ってことは
カツラか、これは。
了解の意味をこめて小さく頷く。
