本当に違うのに。




定春、という名前らしいその白い犬は
「くぅん」と可愛らしく鳴いて赤髪を見上げる。




「あ?何だって?」




「ワンっ!ワンっ!」




「お前、溺れてたのか?」




「ワンっ!
くぅーん…ワンっワンっ」




定春があたしに目を向けると、
同じように赤髪もあたしを見た。




「なんだ、お前定春を助けてくれたのか。
わりぃな、変なこと言って。
…さんきゅ。」




コイツ犬と会話したんですけど。
ビックリなんですけど、スゲェんですけど。




「つーかくっせぇ!
定春!お前臭ぇ!」




「くぅーん…」




「まぁ、しゃぁねぇよな、あんな汚ぇとこで溺れてたんだもんよ。
…つーか溺れるってお前馬鹿!?
犬のくせに犬かきできねぇの?」




「くぅーん…」




「でも無事でよかった!
マジお前サンキューな!
んじゃ!」




「ワンっワンっ!」




安心したように笑う赤髪と、
元気よく吠える白い犬、定春は仲良く帰っていった。




赤髪は、あたしに
自分の着ていたパーカーを投げて。