しかし神谷は丸無視で会計を終えると
店員さんの「ありがとうございました~」を背に
外へ出る。




慌てて追いかけ、外へ出て、
もう一度千円札を見せるけど、




「奢るって。」




そう言って聞かない神谷を
黙って千円札を掲げたまま見上げる。




「だからぁ、お・ご・る、っつってんの!
一応助けてくれたし…頼んでねぇけどな!?
それでも一応助けてくれたからな!礼だよ礼!
それに俺が後輩だっつっても男だぞ!
恥かかせる気か?あん?」




何であたし、キレられてんの。




と、少々意味がわからなかったが、
あまりにも必死だったので
仕方なく野口おじさんを財布に帰す。




ありがとう、と口パクで伝えると
神谷は鼻で笑った。
ケッ!と。




とても、むかついた。




だから、奢ってもらったのも忘れて足を思いっきり踏んづけて
家に向かって歩き出す。




「いってぇなテメェ!自分が年上だからって何してもいいとか思ってんじゃねぇぞオラァ!」




年下のくせに調子ぶっこいてタメ語でペラペラ話すお前に言われたくねぇよ。




心の中でそう悪態づく。




ふと後ろを振り返ってみれば、
神谷はもうすでに遥か向こう。




ズンズン、いや
ドシンドシンと怒った歩き方だったのを
あたしはちょっと笑いながら見つめた。