「なぁ何で?
…って、普通こんなこと他人に話さねぇよな。」




当たり前だ。
こんなこと、言えるわけがない。
他人でなくとも言えないな。





それから神谷は、あたしの声のことにはもう触れず
とにかくしゃべり続けた。
話題が尽きることはなかったが、
コロコロと次々に内容が変わっていくため、答えてあげたくてもその隙がなかった。








「ごちそうさまでした。」と、やっぱりしっかり手を合わせた神谷は
伝票を持って立ち上がる。




「行くか!」と、
もうすでに食べ終わっていたあたしを見下ろす。




頷いて、神谷の後に続きながら
財布から千円札を取り出した。




ラーメン1人分なら余裕で足りるだろう。




そう思っていたのだが、




「伝票お預かりします。
お会計は一緒でよろしいですか?」




「あぁ、はい。」




「1050円になります。」




それはもう、すごく自然に
野口英世おじさんと、十円玉と五円玉をトレーに置いた神谷。




慌てて神谷の腕を叩いて、
自分の千円札を見せる。




何であたしの分まで払ってんの!?