届け！

そこに向かって走った。




別に何かしてやるつもりもなかったし、
というか、このまま突っ込んでどうするか、考えもなかったけど
とにかく走った。




そして
その数人の生徒のうちの１人、リーダー格の男子へ飛び蹴りした。




そのときの反応と言ったらもう、
そこにいた生徒全員、
目をパチクリ瞬かせて、呆然と口を開き、黙り込んでいた。




いや、うん…あたしも飛び蹴りなんてする気なかったんだけど…
だって考えなしに突っ走ってたし。
でもなんか、癖？
それともさっきあいつらのことを思い出していたからだろうか。
とにかく、なんだか
蹴りたくなった。




目の前まで迫った数人の生徒たちを見て、なんか蹴りたくなった。




くわえて、走っているときのその勢いで相手を蹴り飛ばしたときの気持ちというか感覚というか、そういうのを想像するとさらに蹴りたくなった。




結果、蹴った。




ゴメンナサイ。




だがしかし、




「っなにすんだゴルァァア！！」




飛び蹴りを食らったリーダー格が、
呆気にとられていたさっきまでの表情を鬼に変えて怒り出した。




「てめぇ、あの転校生だろ！
しゃべれねぇんだってなぁ？
だからって同情しねぇぞ！
容赦もしねぇ！」




と、リーダー格がしゃべってる間にあたしは、
この数人の生徒たちに囲まれていた１人の男子生徒の腕を掴んで走り出す。




自分のセリフを聞いてもらえなかったリーダー格は
怒りながら後を追いかけてくる。




あー怖い怖い。