しかし、"ある日"をさかいに、
あたしはサザンカを去り、ジンジャーをやめた。




ただの、泉爽花へと戻った。




声が出なくなったのも
その"ある日"が理由。








と、そこまで思い出していつの間にか眉間にシワが寄っていたことに気づく。




気づけば、玄関を出ていた。
あいつらとの思い出に浸っている間に
体は自然と動いていたらしい。




家に帰ろうと校門へ足を踏み出す。
そうしようとして、ふと、振り返った。




本当になんとなくだった。
別に、理由もなく振り返った。




そしたらその視界の隅で
体育館裏が伺えた。




木がたくさんあって、今の時間にしては少し暗く感じる場所。




あたしと同じように下校する生徒たちはたくさんいる。
ほとんどは気づかない。
気づいても、なんてことないように視線を外して
何もなかったかのように元に戻る。








体育館裏で
1人の男子生徒を囲む数人の生徒たち。




その光景を、誰1人として気にも留めない。




苛々した。




きっと、
ここが不良校だから、ああいうことが起きてもおかしくない、って、みんな思ってんだろう。





1人の男子生徒を囲むあの数人の生徒たちも、ここが不良校だから何してもいいとでも思ってんだろう。




苛々して、でもどうにかしないと、って思って、
そしたら自然と足が動き出した。