届け!





まだ中学生になって半年しか経ってねぇのに。
なんで俺はこんなに嫌な思いしてんだよ。
これからの2年と半年をどうやって過ごせっつうんだ。




俺は、省吾に唾を飛ばす勢いで
『嫌だ!どっか逝けハゲ!』と叫んで
自分の席に座る。




不服そうな顔をした省吾が後をついてきた。




「お前、調子乗ってんなよ。」




上から聞こえる声も無視して、
黙って弁当を広げる。




昼休み。
何てことない昼休み。
でもこの日は、違った。




母さんが、朝早く起きて作ってくれた弁当。




俺の分と、姉ちゃんの分と、輝の分と、父さんの分と。
大変なはずなのに、毎朝毎朝。




口には出さねーけど、こっそりと感謝してた。




だからこそ、…許せなかった。




「まじ、きもいよ。
女みてぇなユズルくん。」




そんな憎たらしい省吾の声と同時に伸びてきた
省吾の手は。




目の前に広げた弁当を払った。




何が何だかわからなかったのは一瞬だけ。
すぐに、弁当をわざと落とされたのだと理解して、
沸々と怒りが沸き起こる。