雨の日の二人

結局社会なんて頭に入らなかった
もともと分からないのに…もっと分からなくなっちゃう…

「あ、教科書ありがとう」「…別に」
手渡された教科書の上に小さなアメが一つ

「レモン味、教科書のお礼」
そう言ってまた笑った


休み時間、目の前の席ではニヤニヤしながら
優佳が私に話しかけてくる

「朱莉の隣の人、いい人だよねー」「…知らない」
私は教科書の上のアメを眺める


…アメは好き レモン味も大好き
でも、あの人にもらったのはなんか嫌で
口に運ぶのを躊躇ってしまう

「朱莉、レモンキャンディー大好きなのに…」
「…うるさい」

レモンは大好き
酸っぱい中にも、ほんのり甘さがあって
心も晴れる気がするから