雨の日の二人

チャイムが鳴って優佳は前を向いてしまった

「泉?どした?」「…何でもない」
優佳に言われたことが頭から離れない


引きずってるつもりはない
別に今はあの人のこと好きじゃないし、もう人を好きになることもない
だけど…だけど…

『朱莉、笑って』
あの人の言葉が一つ一つ思い出される
嫌でも、怖くても、ふとした時に思い出してしまう

「泉、笑って?」「…えっ?」「ずっと暗い顔してる、だから笑って」
ほら、また同じことを言うの
少し微笑んで控え目に、そして私の名前を呼んで…

お願いだから…



同じ笑顔で、同じ言葉で私を慰めないで

私の心をかき乱さないで