夜も深まりアパートで1人たばこに火を付ける。
すると急に携帯電話が机の上でヴヴヴと唸りを上げ始めた。
「こんな時間になんだ?」と不信に思いながら、開いてみると見慣れない番号からだ。
「なんなんだ?」と更に不信感は深まり、そのままにしてやり過ごした。
画面を眺めているとどうやら電話の主はメッセージを残しているようだった。
しばらくしてそのメッセージを再生してみると…
「もしもし…」
聞き慣れない男の声だった…
声の質から言って比較的若そうな感じであった。
途中で切ろうかとも迷ったが、何故だか気になり最後まで聞く事にした。
「急に電話してすみません…」
「父さん…信じてもらえるか分からないけど、僕はあなたの息子の洋治です…」
「もし、これを聞いて信じてもらえるならこの番号に折り返し電話を下さい…」
「それではまた…ツーツーツー…」
信じるべきか信じざるべきか決めかねた。
こんなタイミングなどあり得るのだろうか?
藤井が悪戯でもしているんじゃないか?などと疑いは深まる。
しかし、もしこれが本当だとするならば、陳腐な言葉で現すなら、『奇跡』としか言いようがない…
信じたい…信じられない…ジレンマに陥る。
どうするべきか?電話をかけ直すべきなのか?
本当だとして信じてもらえなかったと落胆し、失望しているのだろうか?
そんな事を考えているうちに頭がボーっとなってきた。
気が付けば、いつの間にか眠りについていたようだ。
夢の中で大きくなった息子「『本当に大切なものは何ですか?』」と問いかけてくる。
顔がぼやけてよく見えない。
私は手を伸ばし、息子を抱きしめようとするが、その距離は縮まらない…
私は言う、『正しいかは分からないけど、『本当に大切なもの』は…失って初めて気が付いたよ…」
一度、深く沈んだ夜は何事もなく、また躊躇いもなく明ける。
必ずといっても過言ではない。
何年ぶりだろうか、不本意な形ではあるが、家族揃って朝を迎えたのは…
ケガの手当てを終え、少し落ち着いた…
そのまま眠り込み、まだ晴彦は眠っている。
晴彦を除いた4人で朝食をとる。
昨日の晩のような、賑やかさはなく、皆、黙々と食べる。
まるで何かの作業のように…
何だか味気ない…私は口を開く。
『ヘビ』こと吉岡について、そして昨日の雑誌の記事についてだ。
妻は「そんな怪しいとこに連絡したら、変な勧誘されるんじゃない?」とあまり、乗り気ではない。
恵美も同様にその手の記事は当てにならないよと否定的だ。
まぁその手の業界に身を置いているから余計に言葉に重みがあった。
基はと言うと「連絡するだけしてみれば良いじゃん、なんか面白そうだし」と意外と乗り気だった。
私は取り敢えず電話だけでもしてみようと思い、携帯から電話を掛ける。
電話に出たのは想像していたのとは裏腹に若い男の声だった。
その男曰わく、「一度会って話をしませんか?その際に詳しく話を聞きますから…」
怪しい…全くもって怪し過ぎる…
そして、いつの間にやら男のペースで今日の昼に会う事になった、いや正しくはなってしまった。
基は怪しいから一緒についていくと言う。
まぁ怪しい勧誘やらならば、これで充分対処出来る。
晴彦を残していくのは多少心配だったが、眠っているようなので暫くは問題ないだろうと考えた。
そして、早速、基と車に乗り込み、男の指定してきた駅の喫茶店へ向かうことにした。
『喫茶店』という響きだけで充分怪しかった
あとは何が出るやら楽しみだ。
指定された喫茶店に入り、取り敢えずコーヒーを注文した。
しばらく待っているが男は現れない。
約束の時間になると携帯が鳴って男はこういった。
「もう着いちゃいましたぁ?あと10分で着きますんでじゃあ…」
終始、男のペースな気がして少し不快であった。
そして現れた男はスラッと背の高い、見るからに若者といった感じの雰囲気だった。
基は何だか考え込んでいるような顔をしている。
男は話始めると名刺をスッと差し出した。
意外と礼儀はわきまえているようだった。
「あっ!やっぱりそうだろ?」
急に基が声を上げた。
そこにいた、2人は何のことか分からずに、ポカーンとしてしまった。
「山下!俺、基だよ基っ!」
「覚えてないか?中学まで一緒だったほら?」
「あぁ!?」
「なんだ知り合いなのか?」と私1人取り残されてしまった気分だ。
2人は「こんな偶然もあるんだなぁ」などと会話に華が咲いている。
「ゴホンッ」と咳払いをして、肝心な事と私という存在を忘れている事をさり気なくあくまでさり気なく伝える。
そこでようやく本題に入る…
詳しく話をしていくと、男もとい山下くんは「う~ん…申し上げ難いんですが…」と言いながら、顎の辺りをさすりながら、こう続けた。
「もしかすると…この悩み解決しちゃったかもなんですよね…」
「???…」
私と基は訳が分からず、顔を見合わせる。
すると、それを察したのか山下くんは説明を始めた。
「実はですね…」
どうやら、息子の方から相談を受けていた。
そして、既に昨日のうちに吉岡氏の携帯番号を伝えたとの事だった…
事実は小説より奇なりとはよくいったものだ…
こうも立て続けに事が運ぶとかの『奇跡』も感動が薄れてしまう。
言うなれば『奇跡』の大セール状態だ
あまりの出来事にもうその場は笑うしかなかった…
昨日の晩はなかなか眠れず、朝方になって眠ってしまったようだ。
目が覚めると昼を過ぎた頃だった…
気になってケータイを開くが着信は無い…
やはり、信じては貰えなかったのか…
もう、落胆や失望はしまいと思っていたが、胸に穴が空いたような感覚だ…
やはり、心のどこかで期待してしまったのがいけなかったのかも知れない…
全てはそんな僕が悪いんだ…
もう期待なんてしないと心に決めていたのに…
ケータイの画面を見つめているとなんとも情けない自分がしょんぼりと映っている…
「そんな悲しい顔で見るなよ…」と呟きパタンとケータイを閉じ、机に置こうとした、正にその時その瞬間にであった。
ケータイが震えた、僕の心は震度7くらいに大きく揺れた。
湧き上がる期待を押さえ込み、ケータイを開く、画面には登録したばかりの『父』という文字が表示されていた。
いざその時となると正直な所、動揺し戸惑った!
「どうすれば良い?」
「何を話せば良い?」
「本当に父なのか?」などと様々な思いが去来した…
恐る恐る通話ボタンを押す、一呼吸おいて一言目は「もしもし…」と言った気がする。
その後は少し落ち着いて、取り敢えず、事のいきさつを説明した。
そして、明日会おうと言うことにまでなった。
『何から話そう』そればかりが頭の中を埋め尽『何から話そう』そればかりが頭の中を埋め尽くして他の事が考えられなくなっていた。
その時の感情は今までに無いくらい嬉しかった!
もう全てが嘘なんじゃないかって思えるほどに!
全ての個々の時間はこうして繋がり一つの流れとなった…
これまで話して来た話は全てが真実であるし、全ては虚偽でもある。
全ては可能性の問題なのだ。
これから先の話は語らない事にしようと思う。
最後はきっとないのだから、胡散臭い言葉で表現するなら『未来は可能性で満ち溢れている』ということだけは、確かだ。
それは良くも悪くもフィフティ×フィフティなのだ。
もしかすると私は明日、突発的かつ発作的に死んでしまうかもしれない。
何事もなく1日を終える事が出来るかもしれない。
全ては不確定要素の『かも』であったり『もしかしたら』なのだ。
もしかしたら、あなた自身が物語の登場人物にすれ違っているかも知れない。
もしかしたら、あなた自身が物語の主人公かも知れない。
もしかしたら、あなた自身誰かの物語の脇役なのかも知れない。
もしかしたら、あなた自身誰かの書いた物語の一部でシナリオ通りに生きているだけなのかも知れない。
今まで生きてきたこともこの物語を読むことも台本通りかも知れない。
だが、選択することや分岐するところは自分自身で決めてきたと思いたい。
私はこの物語に名前を付けることが出来ない。
数万年にも渡る、もしくは数百億にも渡る『個』の持つ物語の一部に過ぎないであろう。
そのような物語に一体誰が名前を付けうるのだろうか?
例え付けたとしても陳腐にしか聞こえないのだろう。
そして不確定要素こそが『希望』であり『絶望』の源なのだろう。
だから、物語に非日常的な感動的なラストシーンも非日常的な悲しい現実や未来も描く事は出来ない。
無責任ではあるが続きはそれぞれの『個』の中にあるのではないかと期待している。
人間は想像すること、考えることを常に止まない。
生きている間、無意識に何かを考え、想像している。
それを止めるとき人は死ぬのだろう。
私個人の意見としては、むしろ考えることから解放されるのかも知れない。
風は自由に吹いている。それに身をまかせるも良し、またはそれに抗うも良し。
この物語を読んだ人達には考え続けて欲しい。
何をすべきか?何処へ向かうべきか?
その先に何があるのか?それは手に触れることが出来るのか?何を感じ取るのか?
それは『個』それぞれだろう…
船は修理を終えた。
船出はもう間近だ。
それではまたいつかどこかで再開出来ることを期待してあえて言いたい事がある…『ありがとう、さようなら…互いに良き旅を…』
すると急に携帯電話が机の上でヴヴヴと唸りを上げ始めた。
「こんな時間になんだ?」と不信に思いながら、開いてみると見慣れない番号からだ。
「なんなんだ?」と更に不信感は深まり、そのままにしてやり過ごした。
画面を眺めているとどうやら電話の主はメッセージを残しているようだった。
しばらくしてそのメッセージを再生してみると…
「もしもし…」
聞き慣れない男の声だった…
声の質から言って比較的若そうな感じであった。
途中で切ろうかとも迷ったが、何故だか気になり最後まで聞く事にした。
「急に電話してすみません…」
「父さん…信じてもらえるか分からないけど、僕はあなたの息子の洋治です…」
「もし、これを聞いて信じてもらえるならこの番号に折り返し電話を下さい…」
「それではまた…ツーツーツー…」
信じるべきか信じざるべきか決めかねた。
こんなタイミングなどあり得るのだろうか?
藤井が悪戯でもしているんじゃないか?などと疑いは深まる。
しかし、もしこれが本当だとするならば、陳腐な言葉で現すなら、『奇跡』としか言いようがない…
信じたい…信じられない…ジレンマに陥る。
どうするべきか?電話をかけ直すべきなのか?
本当だとして信じてもらえなかったと落胆し、失望しているのだろうか?
そんな事を考えているうちに頭がボーっとなってきた。
気が付けば、いつの間にか眠りについていたようだ。
夢の中で大きくなった息子「『本当に大切なものは何ですか?』」と問いかけてくる。
顔がぼやけてよく見えない。
私は手を伸ばし、息子を抱きしめようとするが、その距離は縮まらない…
私は言う、『正しいかは分からないけど、『本当に大切なもの』は…失って初めて気が付いたよ…」
一度、深く沈んだ夜は何事もなく、また躊躇いもなく明ける。
必ずといっても過言ではない。
何年ぶりだろうか、不本意な形ではあるが、家族揃って朝を迎えたのは…
ケガの手当てを終え、少し落ち着いた…
そのまま眠り込み、まだ晴彦は眠っている。
晴彦を除いた4人で朝食をとる。
昨日の晩のような、賑やかさはなく、皆、黙々と食べる。
まるで何かの作業のように…
何だか味気ない…私は口を開く。
『ヘビ』こと吉岡について、そして昨日の雑誌の記事についてだ。
妻は「そんな怪しいとこに連絡したら、変な勧誘されるんじゃない?」とあまり、乗り気ではない。
恵美も同様にその手の記事は当てにならないよと否定的だ。
まぁその手の業界に身を置いているから余計に言葉に重みがあった。
基はと言うと「連絡するだけしてみれば良いじゃん、なんか面白そうだし」と意外と乗り気だった。
私は取り敢えず電話だけでもしてみようと思い、携帯から電話を掛ける。
電話に出たのは想像していたのとは裏腹に若い男の声だった。
その男曰わく、「一度会って話をしませんか?その際に詳しく話を聞きますから…」
怪しい…全くもって怪し過ぎる…
そして、いつの間にやら男のペースで今日の昼に会う事になった、いや正しくはなってしまった。
基は怪しいから一緒についていくと言う。
まぁ怪しい勧誘やらならば、これで充分対処出来る。
晴彦を残していくのは多少心配だったが、眠っているようなので暫くは問題ないだろうと考えた。
そして、早速、基と車に乗り込み、男の指定してきた駅の喫茶店へ向かうことにした。
『喫茶店』という響きだけで充分怪しかった
あとは何が出るやら楽しみだ。
指定された喫茶店に入り、取り敢えずコーヒーを注文した。
しばらく待っているが男は現れない。
約束の時間になると携帯が鳴って男はこういった。
「もう着いちゃいましたぁ?あと10分で着きますんでじゃあ…」
終始、男のペースな気がして少し不快であった。
そして現れた男はスラッと背の高い、見るからに若者といった感じの雰囲気だった。
基は何だか考え込んでいるような顔をしている。
男は話始めると名刺をスッと差し出した。
意外と礼儀はわきまえているようだった。
「あっ!やっぱりそうだろ?」
急に基が声を上げた。
そこにいた、2人は何のことか分からずに、ポカーンとしてしまった。
「山下!俺、基だよ基っ!」
「覚えてないか?中学まで一緒だったほら?」
「あぁ!?」
「なんだ知り合いなのか?」と私1人取り残されてしまった気分だ。
2人は「こんな偶然もあるんだなぁ」などと会話に華が咲いている。
「ゴホンッ」と咳払いをして、肝心な事と私という存在を忘れている事をさり気なくあくまでさり気なく伝える。
そこでようやく本題に入る…
詳しく話をしていくと、男もとい山下くんは「う~ん…申し上げ難いんですが…」と言いながら、顎の辺りをさすりながら、こう続けた。
「もしかすると…この悩み解決しちゃったかもなんですよね…」
「???…」
私と基は訳が分からず、顔を見合わせる。
すると、それを察したのか山下くんは説明を始めた。
「実はですね…」
どうやら、息子の方から相談を受けていた。
そして、既に昨日のうちに吉岡氏の携帯番号を伝えたとの事だった…
事実は小説より奇なりとはよくいったものだ…
こうも立て続けに事が運ぶとかの『奇跡』も感動が薄れてしまう。
言うなれば『奇跡』の大セール状態だ
あまりの出来事にもうその場は笑うしかなかった…
昨日の晩はなかなか眠れず、朝方になって眠ってしまったようだ。
目が覚めると昼を過ぎた頃だった…
気になってケータイを開くが着信は無い…
やはり、信じては貰えなかったのか…
もう、落胆や失望はしまいと思っていたが、胸に穴が空いたような感覚だ…
やはり、心のどこかで期待してしまったのがいけなかったのかも知れない…
全てはそんな僕が悪いんだ…
もう期待なんてしないと心に決めていたのに…
ケータイの画面を見つめているとなんとも情けない自分がしょんぼりと映っている…
「そんな悲しい顔で見るなよ…」と呟きパタンとケータイを閉じ、机に置こうとした、正にその時その瞬間にであった。
ケータイが震えた、僕の心は震度7くらいに大きく揺れた。
湧き上がる期待を押さえ込み、ケータイを開く、画面には登録したばかりの『父』という文字が表示されていた。
いざその時となると正直な所、動揺し戸惑った!
「どうすれば良い?」
「何を話せば良い?」
「本当に父なのか?」などと様々な思いが去来した…
恐る恐る通話ボタンを押す、一呼吸おいて一言目は「もしもし…」と言った気がする。
その後は少し落ち着いて、取り敢えず、事のいきさつを説明した。
そして、明日会おうと言うことにまでなった。
『何から話そう』そればかりが頭の中を埋め尽『何から話そう』そればかりが頭の中を埋め尽くして他の事が考えられなくなっていた。
その時の感情は今までに無いくらい嬉しかった!
もう全てが嘘なんじゃないかって思えるほどに!
全ての個々の時間はこうして繋がり一つの流れとなった…
これまで話して来た話は全てが真実であるし、全ては虚偽でもある。
全ては可能性の問題なのだ。
これから先の話は語らない事にしようと思う。
最後はきっとないのだから、胡散臭い言葉で表現するなら『未来は可能性で満ち溢れている』ということだけは、確かだ。
それは良くも悪くもフィフティ×フィフティなのだ。
もしかすると私は明日、突発的かつ発作的に死んでしまうかもしれない。
何事もなく1日を終える事が出来るかもしれない。
全ては不確定要素の『かも』であったり『もしかしたら』なのだ。
もしかしたら、あなた自身が物語の登場人物にすれ違っているかも知れない。
もしかしたら、あなた自身が物語の主人公かも知れない。
もしかしたら、あなた自身誰かの物語の脇役なのかも知れない。
もしかしたら、あなた自身誰かの書いた物語の一部でシナリオ通りに生きているだけなのかも知れない。
今まで生きてきたこともこの物語を読むことも台本通りかも知れない。
だが、選択することや分岐するところは自分自身で決めてきたと思いたい。
私はこの物語に名前を付けることが出来ない。
数万年にも渡る、もしくは数百億にも渡る『個』の持つ物語の一部に過ぎないであろう。
そのような物語に一体誰が名前を付けうるのだろうか?
例え付けたとしても陳腐にしか聞こえないのだろう。
そして不確定要素こそが『希望』であり『絶望』の源なのだろう。
だから、物語に非日常的な感動的なラストシーンも非日常的な悲しい現実や未来も描く事は出来ない。
無責任ではあるが続きはそれぞれの『個』の中にあるのではないかと期待している。
人間は想像すること、考えることを常に止まない。
生きている間、無意識に何かを考え、想像している。
それを止めるとき人は死ぬのだろう。
私個人の意見としては、むしろ考えることから解放されるのかも知れない。
風は自由に吹いている。それに身をまかせるも良し、またはそれに抗うも良し。
この物語を読んだ人達には考え続けて欲しい。
何をすべきか?何処へ向かうべきか?
その先に何があるのか?それは手に触れることが出来るのか?何を感じ取るのか?
それは『個』それぞれだろう…
船は修理を終えた。
船出はもう間近だ。
それではまたいつかどこかで再開出来ることを期待してあえて言いたい事がある…『ありがとう、さようなら…互いに良き旅を…』

