今更だけど･･･何で吉田ってあんなに、おとなしいんだろう。
おとなしい子って家ではよく話すとか言うけど吉田の場合違うだろうな。
俺の勘では、の話だが･･･。

授業中、俺はずっと吉田の事を考える。
俺って結構、吉田に話しかけてるから吉田からウザがられてたらどうしよう･･･。
そんな俺の不安な考えは放課後まで続いた。


･･･―

少し薄暗い空を見上げると頬に一粒の水滴がポツンと落ちてきた。
うわっ、雨かよ･･･。
こんな時に、いつも置いている置き傘がないから最悪だ。
それにも関わらず雨は激しくなる一方。
寒いし、風邪引いたらどうしよう･･･。

そう思い雨に濡れながら校門を出た。
誰か傘、２つ持ってないのかよ･･･。
なんて不満に思いながらも俺は歩た。


「あ、あの、野村くん･･･？」


突然、後ろから聞こえた小さい声に振り向く。


「よっ、吉田･･･？！」


そこには赤い傘をさして少し困った顔で俺を見ている吉田の姿があった。


「あの、傘･･･２つあるので･･･。」


そう言って吉田が鞄から取り出したのは薄ピンクの折りたたみ傘だった。


「ありがと！助かるよ。」

「ピンクだけど濡れるよりは良いと思うから･･･。」


ちょっと戸惑っている吉田にも
優しさを感じて嬉しくなった。
こんな些細な事で俺の吉田への想いは強くなるばかりだ。
そういえば、こんなに吉田と会話が続くのは初めてだよな？


「あの、野村くん･･･いつもありがとう。」


コレだ。
この吉田が、たまに見せる笑顔に惚れたんだ。
本当に、おっとりとしていて可愛らしい笑顔なんだ。


「えっ、何が？」


というより、吉田からお礼を言われる様な事したか？


「･･･いつも話しかけてくれて、嬉しいから。」


頬を赤らめて言う吉田を見て俺まで顔が赤くなりそうでさしている傘で顔を隠した。


「いや全然いいから！嬉しいなら、もっと話しかけるから！じゃあ！」


そう言って吉田の言葉なんか聞かないで急いで走って逃げる俺。