恋に恋して恋をする。

玄関までつかさと一緒に行ってから、ふと気になって奏くんの下駄箱をチラ見した。


まだ靴がある。


「あっ」


「どした?」


すでにローファに履き替えたつかさが振り返った。


「あ……と、私、忘れ物しちゃって」


「何?一緒行こっか?」


「大丈夫!ほら、亮平くん待ってるよ」



「うん……じゃあ、バイバイ」


つかさは少し怪訝な顔をして行ってしまった。


……本当は忘れ物なんてない。
とっさに嘘をついてしまった。


奏くん、今日も保健委員かな……?


だからと言ってどうするつもりだ?私。


何を話に行くつもり―――?




黒地に青のラインが入った、シンプルだけどオシャレなスニーカーがきちんと並んでいる。


「メガネといい……シャレてんなぁ」


おっさんみたいな口調でつぶやく。


「そりゃどーも」


期待していなかった返事を急に背後からささやかれ、口から心臓が飛び出そうになる。



奏くんは私の肩越しにスニーカーを取り出して、「そんなにシャレてるかなぁ」とつぶやいた。