恋に恋して恋をする。

「でもさ、まぁマンガとかの知識なんだけどさ」


「出たよ。ちはるのマンガ好き」


「確かに恋する主人公はせつなくて、ぎゅーって苦しくて、涙ポロポロ流してるけど……」


部屋の本棚に並んでいる少女マンガたちを思い浮かべる。


「ほとんどが片想いでさ、私は両想いになったらラブラブ幸せになるのが普通だと思ってたよ」


「ラブラブ幸せって……」


つかさは苦笑いした。


ありがとーっしたぁ、とサッカー部の号令が微かに聞こえて窓の外を見る。


ぞろぞろと歩き出す人の群れの中に、ピョンピョンとこちらに手を振る影がいる。


「あれ、亮平くん?」


「そ。アイツ視力2.0だから」


変なポーズでアピールする亮平くんを見て、つかさは「ばぁか」と笑った。