恋に恋して恋をする。

もらったジュースを飲もうと、渡り廊下のベンチに座る。


奏くんもコーヒーを買って隣に座った。


「ありがと。今日誰にもおめでとうって言われてなかったから、正直嬉しかったよ」


「え?友達は?」


「あー……この後マックに行くけど、別に誕生日祝いとかじゃないから」


へへっと笑ってジュースを一口飲む。


「年取りたくなーい!誕生日も無視していいから!……って散々わめいてたからさ、忘れられてもしょうがないんだけどねぇ~」


でも、やっぱり淋しいもんだな。


立ち上がって手すりに頬杖をつきながら、中庭を眺める。


「何か、秋ってお祝いって感じじゃないしね」


中庭の木々も茶色く萎れて、落ち葉がはらはらと風に舞っている。


「こうさ、春みたいに桜とか咲いてさ、ぱーっと華やかだといいんだけどね」


「咲いてるじゃん」


「え?」


黙って聞いていた奏くんは、すっと中庭の端を指差した。


その先には、小さい花壇にコスモスが植えてあった。


「確かにピンクだけど、あれはコスモスだよ」


「うん。だから秋の桜って書いてコスモスって読むだろ」


え?コスモスって秋桜って書くの?
てか漢字あるんだ……


「初めて知った……」