「何か、ごめん」


釈然としないけど、とりあえず謝ってみる。


「いや、ごめん。責めてるわけじゃなくて……俺がカッコ悪すぎるだけ」


奏くんはぶすっとしているけど、怒っているわけじゃなさそうだ。


もしかして、照れてんのかな……？


「何か気もたせるみたいだし、言うの迷ったんだけどさ」


そういえば、さっき教室で別れるとき何か言いたそうだったな。


「気もたせるも何も、あんな振り方しといて今さらでしょ」


私がさらりと突っ込みを入れると、奏くんは「確かに！」と、吹き出した。


いつものふんわりした微笑じゃなくて、子どものような無邪気な笑い方だった。


奏くん、こんな風に笑うんだ……


「てか、やっぱ奏くんナルシストだね」


「いやいや、俺なりに気を使ってんですけど」


「あの失礼発言が気づかい～？」


しかめっ面してみせると、奏くんはまたあははと笑った。


「ま、安心してよ。奏くんへの想いはお陰様ですっかり冷めたからさ」


私も笑って冗談っぽく返した。


返した……


けど、


何となく胸がモヤモヤするのは、気のせいだろうか？