はぁ~……


ため息をつきながらうなだれていると、後ろからすっと手が伸びてきた。


キレイな指先から100円玉が投入される。


びっくりして振り向くと……


「奏くん!?」


とっくに帰ったはずの奏くんがそこにいた。


「どれ?」


奏くんはこっちを見ないまま聞く。


「あ、白ブドウ……」


ん、と短く返事があってから、ピッという音とガコンッという音がした。


奏くんは、ひょいとジュースを取り出して渡してくれた。


「はい。誕生日おめでとう」


「えっ……?」


「まぁ誕生日プレゼントにしてはショボ過ぎるけど、許してよ」


私がポカンとしていると……


「あれ?今日、誕生日だよね?」


「う、うん。そうだけど、何で知ってるの?」


「何でって!小島さん自分で言ったんじゃん!あの時、教室で」


あの時……というのは、奏くんが俺のこと好きになるな的発言をした、例のあの日のことだろう。


正直テンパってて何を話したかよく覚えていないが、恐らく言ったのだろう。


「な、何だよ~……それ……」


奏くんは脱力したのか、コテンと自販機にもたれかかった。


「あんなあからさまな教え方するから、てっきり祝ってほしいのかと思った」


あからさまで悪ぅござんしたね。


「本当は覚えてるのに知らんふりして帰るのもな、と思って引き返して来たのに」


奏くんはバツが悪そうに目をそらしたまま、襟足をかいた。