19号室に戻ると、坂下さんが西野かなを歌っていた。


充分盛り上がってるみたいで、そっとグラスを置いて端に座った。


何曲か人が歌うのを聞きながら、女の子たちを見ていると、みんなすごくオシャレしているのがわかった。


だいたいがミニのスカートかワンピで、ショーパンの子も生足だった。


私も昨日はかなり服装には悩んだ。


あんまり張り切ってるように見られたくなくて、かと言ってデニムもあんまりだと思った。


結局無難な丈のチュールスカートにカラータイツでお茶を濁してしまった。


女の子たちがみんなギャル系っていうのもあって、私は悪目立ちしてる上に花がなかった。


ますます居場所がなくて縮こまっていると、


「ちはるちゃん、何か歌わんの?」


隣にいた男の子が声をかけてくれた。


男の子に下の名前で呼ばれるなんて初めてだったけど、胸キュンするより先にビビってしまった。


「えっと、歌ヘタクソで……」


「えー、カラオケ意味ないじゃん!」


おっしゃる通り……


「まぁ、いーや。あ、俺、トモヤ」


トモヤくんは、たぶん自分の好きなアーティストの話とか、カノジョと別れて2ヶ月だとかの話をしてくれたんだけど、正直うるさくてあまり聞き取れなかった。


でもあんまり聞き返すのも悪くて相づちを打ってたら、


「てわけで、とりあえず番号交換しよ」


どういうわけなのか知らないけど、トモヤくんはスマホを取り出した。


私も慌ててスマホを鞄から出そうとしたら、


…………ない。ケータイ忘れてきた!


ありえん……


「ご、ごめん、ケータイ忘れてきたみたい……」


「マジで?合コンにケータイ忘れるとか、どんだけやる気ねーのよ」


うけるーと、トモヤくんは笑ったけど、目は笑ってなかった。