恋に恋して恋をする。

「さっきのヤツら、やめといたほうがいいんじゃない?」


「え?」


「何か、小島さんに合わないよ」


……もしかして、心配してくれてる?


ちょっと喜んでいる自分がいて、ブンブンとかき消す。


「か、奏くんに関係ないじゃん」


「まぁ、そうなんだけど、俺がこの前フッたせいでヤケになってるんじゃないかと思って」


「ち、ちがっ!」


違う……と言いかけて口をつぐむ。


正直、図星だった。


「奏くんって、結構失礼だね」


「気にさわったんならごめん。でもホントは俺、こういう人間なの」


奏くんは自嘲気味に笑った。


「ナルシストなわけじゃないけどさ、俺って割とイケメンみたいでさ」


「は?」


「中学ん時は告られたりもしたんだけど、付き合ったらだいたい“そんな人と思わなかった”って言われたり」



……ふーん、カノジョいたことあるんだ。


「で、高校ではメガネで地味にしてたんだけど、小島さん、すっげーキラキラした目で俺のこと見てくるし」


奏くんはちょんっと人指し指の先で私の頬をつついた。


「ここに書いてあったからさ、“私、恋してます”って」



…………な、な、何よ!それ!


「だから、目覚ましてもらおうと思っただけで、悪気なかったんだ」


こ、これが悪気ないわけあるか!


私は奏くんを押し退けるようにグラスにドリンクをくんだ。


「だから、ムキになって気の合わないやつと合コンなんてやめなよ」


背中からそう聞こえたけど、


知るかってんだ!
バカヤロー!!