「……いないよ」


あ、いないんだ。ちょっとホッ。


「……いないよ。いないけど……」


けど!?


「ねぇ、もし違ってたらホント悪いんだけど、小島さんって……」


奏くんは机に軽くもたれながら、床に落としていた視線を私に向けた。



「……俺のこと気になってる?」



「!?」



かーっと体中の血液が顔に集まるのがわかった。



「あ、やっぱ図星?」


小島さんってわかりやすいね、と、奏くんは笑った。


私は何か言い返したくて口をパクパクさせたけど、何も出てこなかった。


「ちょっとごめんね」


奏くんが急にずいっと私の近くに顔をよせる。


ドキッとして目をぎゅっとつむっていたら、奏くんはハハっと声をあげて笑った。


「何もしないよ。これ取るだけだから」


奏くんは机の中からメガネケースを取り出して、かけていたメガネをしまった。


私が座っていたのは、昼間奏くんがテストを受けていた机だった。


「まぁさ、俺のこと好きなんて趣味悪いからやめたほうがいいんじゃない?」



奏くんはにっこり笑って、じゃあねと手を振った。