予鈴のチャイムが鳴ると同時に、問題用紙片手に先生が入って来た。


そのすぐ後ろをすり抜けるようにして、奏くんはさっと私の前の席に着いた。


―――おはよう


―――走ってきたの


――――ギリギリセーフだね



……ヤバい。
セリフは浮かぶのに、どう話しかけていいのかわからない。


緊張して汗ばんだ手を閉じたり開いたりしてると……


「問題用紙配るけど、まだ表向けるなよ~」


先生が大声で言って、慣れた手つきでプリントを配る。


まだ少し上下してる奏くんの肩がくるりと振り返った。


「あ、ど、どーも!」


プリントを受け取りながら出た言葉はそれだった……
どーもって何よ?


奏くんは伏せてた目をチラリと上げて、


「あ、そうか、後ろ小島さんか」


それからふっと笑って言った。


「どーも」






……………いい。




………………やっぱ、いい。