奏くんは名簿が私のひとつ前で、一学期は前の席だった。


と言っても、プリントを配るときくらいしか関わりがなくて、話したことはほとんどない。


顔も黒渕メガネと長い前髪に隠れていて、カッコいいと思った記憶はなかった。


これが本当にあの奏くん?


ほかのクラスにも奏っているのかな?


いや、変わった名字だし、それはないか…



そんなことをぐるぐる考えながら、もう一度顔を確認すると、


……ぅおっとっとっとぉ………


さっきまで安らかに眠っていた瞳がパッチリ開いて、私を見つめていた。