その瞬間、短い舞の髪がサラッと揺れ茶色い色素が光った

この職場に来て初めての友達で何より頼りになる。





「雨の日って渋滞するから困るんだよ」

「仕方ないでしょ…皆、朝は必死なの」




「…そうだね」






皆、必死で生きている








それは例外なく…あたしもそうで…だから働いて金を掴む訳で。



弱肉強食って言葉が似合うほど切り捨ての早い会社だが…

それなりに感謝もしているし正社員として雇われて幸せに思う。




ただ、この職場にずっと居るつもりはない…無論遠慮したい。




そんな話を親にすれば「結婚するの」何て曖昧に訊かれる…

結婚が終着地点ではないし…ゴールだとも思わない。むしろ過酷。




誰かと共存し合って生きるって事は…それなりに難しくて退屈で。

ただ、親は老後の為にとか孫をみたいとかそんなことを口にする様になった。






「あたし結婚しないよ」





にこって効果音はないけど…今出来る精一杯の笑みで答え微笑む。

結婚なんてしたいと思わないし…付き合う程度が何かと好都合。




会いたいときに合って話して抱きしめて結婚なんてしたら毎日が煩わしい。

嗚呼、今日も…なんて人生は出来れば通りたくない道だが…人生甘くない。






「今日も仕事か……」


「それ昨日も聞いた」

「うん、昨日も言った」




肩をがっくりと落とし舞の隣をキープして歩く。

歩調は少し舞の方が速くて…あたしの足は早送り状態。




朝からせっせっと動く己の足に褒美とばかりに椅子に座り休息を養う。