羽をくれた君~side陸~【完】



「陸は自分に素直じゃねーからなぁ。お前も俺みたいに落ち着ける女にやっと出会えたんだよ」



何言ってんだ亮。


俺は人を本気で好きになる資格なんてねぇんだよ。

第一俺ん中には百合しかいねえ。


そう、百合だけだ。




アパートに帰ると奈緒はまだ帰ってきていなかった。

最近、帰るとアパートの窓から灯りがもれていて、玄関を開けると奈緒が笑顔で“おかえりなさい”と言って夕飯の用意をしている。


それを見てホっとしている自分がいる事に気づいていた。




そんな日常が当たり前になっていた。


誰もいない部屋へ帰るのは久しぶりだ。


20時になってもまだ奈緒は帰って来ない。

カップラーメンを食べて俺はソファに横になった。

さっきから何度も時計を見てしまう。

多分栞と、亮の病院に行ってるんだろうが、いつもはこんなに遅くならない。


その時、玄関のドアが開いた。

奈緒が息を切らして帰ってきた。