それにしても、どうして興味があるとわかったんだろう。

『グリーン・エアライン』 と聞いて、小野寺さんの顔がすぐに浮かんだ。

客室乗務員がどうのというより、小野寺さんの会社で働いてみたいというのが

本音だった。

佐名子さんから転職の誘いがあった夜、俺は兄貴の友人の小野寺さんに

連絡した。

大手航空会社から引き抜かれて、新規の航空会社を立ち上げる仕事をして

るってのは、お袋経由で聞いていた。

新しいことに挑戦したい、自分を変えたいと思っていた俺には小野寺さんが

眩しかった。


北森さんという人からこんな誘いをもらったと伝えると 

「シンをスカウトするとは さすがだな」 と佐名子さんを褒めていた。

小野寺さんから 「おまえに向いてると思う やってみろよ」 とも

言われていた。



「ないことはないです……けど 接客なんてしたことないです 

笑顔なんてできないし」


「今までのお仕事だって接客でしょう あなたの電話の言葉遣いは完璧だった

私たち 新しい航空会社を目指してるの 

あなたにも一緒に参加して欲しいの 考えてもらえないかしら」



このとき、髪と髭はそのままでもいいと認めてもらえば引き受ける……

と条件を出した。

俺が出した条件が認められたと返事が来たのは翌日だった。

おそらく小野寺さんが、会社に掛け合ってくれたんだろう。