「ちょ、ちょちょちょっと待ってください!先生、私たち付き合ってません!!」
「あら、そうだったの?私ずっとそうだと思って…」
「どうしてそんなことに…」
私は思わず頭を抱えた。
確かに、樫野くんに付き添って保健室に来ることは多かったけど…!
でも、一度も先生の前でそんな雰囲気になったことは無いし、っていうか先生の前じゃなくたって樫野くんをそんなふうに見たことなんてないし!
樫野くんは、お世話する部員のひとり。
今は、仲のいいクラスメイト。
ただ、それだけだ。
「でも、そうなの。残念だわ、お似合いだと思ってたんだけど…」
「似合ってませんから!……っていうか、樫野くんもなんか言ってよ!」
何故か未だフリーズしたままの樫野くん。
いい加減戻ってきてください。
「……え!?いや、ちょっとびっくりすしすぎて…。先生、変な冗談やめてくださいよ」
「なによー、ふたりともお似合いなのが悪いんでしょ?」
「いやいやいやいや!」
何言ってんすか、とふたりして突っ込む。
先生はすっかり拗ねてしまった。
「ちょっと勘違いしただけじゃない、そんな怒らないでよ」
「怒ってませんよ。ただ動揺しただけです」
「動揺したってことは、もしかして…」
「いい加減怒りますよ!!」
私たちはしばらくそんな言い合いをして漸く先生を納得させた。
謎の疲労を感じながら保健室を出ると、ちょうど17時を知らせるチャイムが響いた。
……ずいぶん時間を割いちゃったよ。
生徒の準備は18時までと決まっているので、あと1時間しかない。
受付の設営、そういや中途半端だった、なんて思い出して、私は樫野くんに「早く戻ろう」と声をかけるつもりで彼の方を見た。
「……樫野くん?」


