君と本気のラブゲーム


別に褒められたわけじゃないのに、ちょっと嬉しい。



「失礼しまーす」


保健室のドアを元気よく開けて中に入っていく樫野くんは、もう先程の会話なんか気にしていないようだったけど…。



「あら、樫野くん。どうしたの?」

「いやー、ちょっと足首ひねっちゃったみたいで」

「やだ、部活終わってもあなた怪我ばっかりねー。こっち座って」



保健室の先生と親し気に会話をする樫野くんの横で、私はまだほんわかした嬉しい気持ちのまま、手当てされる彼を、ただ見ていた。


「岬さんも大変ねぇ」


不意に私に話しかけてきた先生の声に、ハッと我に返る。




私も部活で何度もこの先生にはお世話になっているので、仲良くさせてもらっていた。

私の場合は、怪我人の付き添いとか、部の備品である救急セットの補充なんかで、だけど。

まだ20代前半の若い女の先生は、いつも優しく接してくれるから、話しやすいんだ。


「え、大変って、何がですか?」


そう訊くと、先生はきょとんとした顔で首を傾げた。


「こんな、怪我の多いやんちゃな子が恋人で!」



「……」


「……」


先生の言葉に、私だけでなく、手当てを終えて椅子から立ち上がろうとしていた樫野くんまでもがフリーズした。



……え?


「せ、先生、今なんとおっしゃいました?」


樫野くんより早く脳が動き出した私は、固まってしまった私たちを不思議そうに見ていた先生に、おそるおそるそう訊いた。


こい…、いやいや、聞き間違いだよね?



「え?だから、こんな怪我の多いやんちゃな子が恋人なんて、岬さんも大変ね、って言ったんだけど…」


何か悪いことでもいったかしら、と首を傾げる先生に、私たちは絶句していた。