「ちょ、ちょっと待って、そもそも私のせいだよね!?樫野くん、ごめん…!」
タンッ、と軽やかに椅子から下りて、嘉乃が駆け寄ってきた。
あ、そういえば、見事な肘鉄で樫野くんを落下させた張本人は嘉乃だったっけ。
「大丈夫だって。ふたりとも、大袈裟」
樫野くんはそう言って苦笑するけど、捻ったのなら程度がどうであれ痛いはずだ。
「嘉乃、私樫野くんを保健室に連れてくから、ごめん暗幕の方、抜けるね」
「うん、わかった!樫野くん、ほんとごめんね…!」
「おい、だから保健室行くほどの怪我じゃねーって……、いってぇ!!」
捻ったらしい右足首を、ちょん、と軽く蹴ってみただけで、この様。
「何すんだよ!!」
「ほら、痛いんじゃん!大人しく保健室行くよ!」
ぐい、っと腕を引っ張って、教室から連れ出す。
樫野くんもさすがに諦めたのか、不機嫌そうな顔をしつつも、抵抗しようとはしなかった。
「腕、引っ張んな。ちゃんと行くから。っていうかひとりで行けるから岬は教室戻れよ」
「そんなこと言って、逃げる気じゃないの?」
「そんなことするか。……痛いのは確かだし、湿布貼っといた方がいいってことはわかるし」
樫野くんの言葉に、私は掴んでいた腕を離した。
こう言ってるし、大丈夫だろうと思って。
「一緒に行く。嘉乃はああ言ってるけど、結局は私のせいだし」
「別に、お前のせいとか思ってないから気にすんな」
そう言ってくれるよね。
優しいもんね。
知ってるよ。
「……でも、付いてく」
それくらいしか、今の私にできることが思いつかないから。


