「岬お前マジで覚えてろよっ!!」
……クラスメイトの可愛い冗談に本気でキレてるようじゃ、モテモテライフはまだまだ先かな。
「あ、嘉乃。そこ外見えてるよー。もう少し右に寄せて」
「え?……って、きゃあっ!!」
私の言葉に、振り向こうとした瞬間。
嘉乃の隣で作業していた樫野くんに、バランスを崩した嘉乃のひじが思いっきり当たって。
「うわっ」
「危な」
ガタン、という椅子が倒れる音と共に。
嘉乃に思い切り肘鉄された樫野くんが、椅子から落ちてきた。
その時。
支えよう、なんて無謀なことを私の頭は勝手に考えていて、そして勝手に身体は動いていて。
気付いたら、私の脚の上に、樫野くんがのっかっている状態だった。
「あ…っぶねえな!普通に着地できるから!」
「ご、ごめん」
私の上から退きながら怒る樫野くん。
確かに、彼の運動神経なら私の行動はただの邪魔だっただろう。
でも、気付いたら動いていた、という状態だったので、今さらそんなことを思っても仕方ない。
「……痛」
「樫野くん!?」
足に体重を掛けたときに、微かに顔をしかめたのを見て、私は慌てて立ち上がる。
「どこか、痛めた!?」
「……や、大したことない。それより下敷きになったのはお前だろ。どこも怪我してないか?」
「どこも痛くないし大丈夫。それより、大したことないって…」
樫野くんの、悪い癖。
平気なはずないのに、平気なふり、すること。
「……多分ちょっと捻っただけだから」
「ほんとごめん!!私が余計なことしたから…。保健室行こう」
「大丈夫だって!」


