君と本気のラブゲーム


「お、おまえら…っ!マジでふざけ」

「かしかしうるさい」


あっさり文句を遮られた樫野くん。

アハ、まじ、どんまい、かしかし!



恨めしそうにいちど私をにらんだ樫野くんの視線は完全にスルーして、私は他の取り付け隊の皆にアドバイスをする。

そこもうちょっと右、とか、もっと上げて、とか。


光が入ってきたら台無しだもんね。ちゃんとやらないと。







でも、まぁ。

……かしかし、じゃなくて、樫野くんとは、わりと仲がいい方だと思う。


私は今年の夏まで野球部のマネージャーをやってたんだけど、樫野くんはその野球部の、一応エースだった。


地区大会で早々に負けちゃったけど。


でも、2年半、一緒に頑張ってきた仲間だ。


攻守に秀でてた樫野くんは1年生のころからレギュラーだったけれど、だからと言って驕るわけでもなく、私としては、今年の3年メンバーの中でいちばん練習していたのは彼だったんじゃないかと思っている。


ひたむきで、努力家。


私の中の樫野くんのイメージは、そんな感じだ。



野球にすべてを捧げてたせいで、勉強の方は補習組の常連だし、恋愛にしたって今までひとりも彼女がいたことがない。


短く黒い髪に、浅黒く焼けた肌、筋肉の付いた身体つき。


見た目も中身も、野球一筋っていう男なんだ。


顔立ちは悪くないんだし、きっと本人さえその気になればそれなりにモテるんじゃないかな、なんて思うけど。