「よいしょ…っ!嘉乃、これどこに持っていくの?」


嘉乃と一緒に長い暗幕を持ち上げる。


たった2,3枚なのに、なんでこんなに重いんだ。



「あっちあっち!この教室カーテンついてないから、窓かくしにするんだって!」


カーテンついてないとか!


「わかった、じゃあそっち通ろう!」



机を並べて作った通路は、もうすでにほとんど完成されているため、通れる道が限られている。



なんとか窓際まで辿りついて、窓から入る光を遮断するために暗幕を取り付けているクラスメイトに、運んできた暗幕を渡す。


「はい。まだ必要?」


暗幕取り付け隊にそう訊く。

嘉乃は運んだついで、と、高い身長を生かしていつのまにか取り付け隊に加わっていた。



「や、多分もう大丈夫」


取り付け隊の取り付けた暗幕のバランスを見るために窓から少し離れた位置にいた男子が、そう言って笑った。


「了解。…嘉乃、じゃあ私先に戻ってるね」


もともと、暗幕を運ぶのではなく受付の設営を担当していた私は、自分の役割に戻ろうと嘉乃に声を掛けた。


「うん、わかったー」


暗幕を取り付けるために両手を上げ、思い切りつま先立ちしながら顔だけこちらに向けて、嘉乃はそう言った。


その返事を聞いて、私は歩き出そうとする。


「あ、ちょい待って」


「何?」


が、すぐに、さっき私の質問に答えてくれた男子の声に立ち止まる。


「岬、今手空いてたりする?」


「え。まあ、自分の仕事はもう終わるけど」


私の仕事はもともと他に比べて楽な方。


だからこそ、暗幕を運ぶ嘉乃の手伝いもできたんだし。