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(……ど、どうしたらっ!)


諒太郎と嘉乃の橋渡し役であったはずの綺深が出ていった部屋で、嘉乃はどうしようもなく手持ちぶさたであった。

そしてどうしようもなく、混乱していた。


どうしたらいいのか、まったくわからない。


とりあえず、先程からのゲーム観察を続けてはいるが。



(アヤの馬鹿ーっ)



確かに、最難関、と聞いた時から、ある程度の覚悟はしていた。


けれど。


(……こんなタイプは想像してなかったよぉーっ!)


このままゲームを観察してるだけならまだいい。


けど、もし会話をしなくちゃならない状況になったら。


そうなったらちゃんと諒太郎と会話ができるのか、嘉乃は激しく不安だった。




どうしよう。


どうしよう。



ぐるぐるとそんな言葉が頭を廻り始めた頃。



「おい」


感情の無い、低い声が、嘉乃の耳に響いた。



「……えっ!?」



ハッと我に返ると、目の前には、諒太郎が持っているのと同じ、黒いコントローラー。


それはまぎれもなく、今も画面を見たままの諒太郎が嘉乃に差し出しているもので。


「……え!」


嘉乃はもう一度そう声を上げていた。


(私!?)


自分に差し出されていると自覚した瞬間、気がつけば嘉乃は差し出されたそのコントローラーを受け取っていた。